自衛のためのサイバー攻撃の仕組み講座(AI時代・エンジニア水準)

区分1 攻撃者の考え方と、今の地図★★★

No.02 2026年の脅威の地図(IPA 10大脅威とAIの影響)

日本で「いま何が危ないと言われているか」を、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」で押さえ、自分の事業に当てはめる単元です。受講生への最初の講義に、そのまま使えます。数字や順位は2026年10月時点のIPA公式ページのものです。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 組織向けの10大脅威 2026
  3. 第2章 個人向けの脅威
  4. 確認問題

第0章 前提知識

① IPA :国の情報処理の専門機関

IPAは「情報処理推進機構」の略で、日本の国の機関です。 情報セキュリティの注意喚起や、脆弱性(ソフトの弱点)の届出の受付などをしています。

② 10大脅威 :毎年出る、日本の脅威ランキング

IPAが毎年、その前の年に社会的な影響が大きかった脅威を選んで発表している物です。 IPAが候補を選び、約250名の研究者や企業の実務担当者でつくる選考会が、審議と投票で決めます。

「個人」向けと「組織」向けの2種類があります。 個人向けは順位を付けず、五十音順に並べます。組織向けだけ順位が付きます。

2026年版は、2026年1月29日に発表されました。

③ 順位の読み方

順位は、「その脅威の技術が高度か」ではなく、前の年に社会への影響が大きかったかを、専門家の投票で決めた物です。 ですから、順位が低い脅威が、あなたに関係が薄いとは限りません。

第1章 組織向けの10大脅威 2026

① 全体の並び 必ず覚える

順位 脅威 一言でいうと
1 ランサム攻撃による被害 データを暗号化して、お金を要求する
2 サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 取引先・委託先・部品から入る
3 AIの利用をめぐるサイバーリスク 今年初めて入った
4 システムの脆弱性を悪用した攻撃 更新されていない弱点を突く
5 機密情報を狙った標的型攻撃 特定の相手を狙って、情報を盗む
6 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む) 国際情勢に絡んだ攻撃
7 内部不正による情報漏えい等 内部の人による持ち出し
8 リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 在宅やクラウドの入口を狙う
9 DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃) 大量の通信で、サイトを止める
10 ビジネスメール詐欺 取引先を装ったメールで、お金をだまし取る

1位のランサム攻撃は11年連続です。 2位のサプライチェーンも8年連続で、どちらも長く上位にいる物です。

講義では、まず「上位2つは毎年いる定番」「3位は今年の新顔」と言うと、流れが伝わります。

② 3位の「AIの利用をめぐるサイバーリスク」 必ず覚える

IPAが挙げているリスクの内容は、3つに分けられます。

注目してほしいのは、攻撃の話だけではない点です。 使う側の失敗も、並んで入っています。

つまり、AIに社内の情報を貼り付けて漏らしてしまう、AIが作った嘘の情報を事実として使ってしまう、といった「自分の側の事故」と、「攻撃者がAIを使う」話の両方が、同じ項目に入っているのです。

この講座では、使う側の事故はNo.03とNo.11で、攻撃者のAI利用はNo.13で扱います。 AIそのものを攻撃する手口(No.10)は、この項目の延長にあります。

③ 4位以下を、自分の事業に当てはめる 必ず覚える

脅威名だけでは、自分の事業のどこの話か分かりません。 あなたの環境に引き寄せると、次のようになります。

脅威 あなたの環境での例 この講座で扱う所
ランサム攻撃 Macや共有ドライブ、VPSのデータを暗号化される No.14
サプライチェーン 使っているプラグイン・拡張機能・MCP・委託先から入られる No.12
AIの利用 AIに渡す情報、AIエージェントの権限 No.10・11・13
脆弱性の悪用 WordPress本体やプラグイン、VPSの更新漏れ No.09
標的型・BEC 取引先やスタッフを装ったメール、LINE No.04
リモートワーク等 クラウドのログイン、Googleアカウント No.05・06
内部不正 スタッフが顧客情報を持ち出す、退職者のアカウントが残る No.15

地政学的リスクとDDoS攻撃は、小さな会社が直接の標的になることは多くないので、今回は深追いしません。

この表を見ると、10大脅威の多くが、人とアカウント・サイト・AI・控え、という4つの領域に分けられると分かります。 講座の区分が、そのまま並んでいるのはこのためです。

第2章 個人向けの脅威

① 個人向けには何があるか さらっと

個人向け(五十音順)には、次のような物が入っています。

組織向けと違うのは、アカウントとお金が直接の標的になっている点です。 そして、あなた個人のGoogleアカウントや、スタッフ個人のLINEが乗っ取られると、組織向けの脅威の入口にもなります。

個人と会社の境目は、攻撃者にとっては関係ありません。 詳しくは区分2で扱います。

○ よくある勘違い:「ランキングが低い脅威は、気にしなくてよい」→ 順位は社会への影響の大きさ。自分の環境への関係とは別
○ 注意:解説書(詳しい対策つきの資料)はIPAのページにあります。この講座は、その要点を自分の環境向けに読み替えた物です

組織向け1位はランサム、2位はサプライチェーン、3位は今年初めて入ったAIの利用をめぐるリスク。使う側の事故と攻撃者のAI利用の両方が入っている。順位は社会への影響で、自分の環境への関係とは別。

確認問題

問1 受講生から「10大脅威の3位のAIのリスクって、AIで攻撃が巧妙になる話ですよね」と聞かれました。本文に沿って答えるとどれが適切でしょうか。

問2 10大脅威の順位は、どのように決まるでしょうか。

問3 あなたのWordPressのプラグインに更新漏れがありました。10大脅威 2026(組織向け)の中で、一番近い項目はどれでしょうか。

出典: - IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」 https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html - IPA プレスリリース(2026年1月29日) https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20260129.html